コロナ流行下で、子どもの世話が増えた人の生活変化を調査休園・休校の影響で労働や余暇の時間は減少野菜摂取量は3割減 、仕事をしていない人にはメンタル不調の懸念も「子どもの世話が増えた人の生活調査」調査サマリー子育て時間が「増えた」世代は30~40代が全体の8割。「子育て」が増加した人は「労働」の時間が大幅減、「家事」の時間が増加。「6時間以上の勤務」が6割減、「仕事をしていない」人は2.4倍と激増。「仕事をしていない」人のうち、約57%がメンタル不安あり。子育てが増えた3割の家庭で野菜の摂取量が減少。子どもに合わせたメニューが原因か?調査結果1.年齢構成<子育て時間が「増えた」世代は30~40代が全体の8割>(図1)左:子どもの世話をする時間が2時間以上増えた人の年齢分布(n = 355人)右:子どもの世話をする時間が2時間以上増えていない人の年齢分布(n = 1236) 「子どもの世話をする時間」が2時間以上増えた人のうち、30~40代が全体の8割。特に30代は、増えていない人に比べて1.6倍多い結果になりました。一方、2時間以上増えた50代は、増えていない人の半分の割合でした。子育て世代の30代と、子どもが自立しているであろう50代以上で差が出る結果となりました。 2.時間の使い方の変化<「子育て」が増加した人は「労働」の時間が大きく減少、「家事」の時間が増加>(図2)子どもの世話をする時間が2時間以上増えた人・増えなかった人の時間の使い方の変化(n = 355人)「子どもの世話をする時間」が2時間以上増えた人は、コロナ感染拡大前に比べて、家事をする時間が多くなる傾向がみられました。一方、「労働時間」は大幅に減少し、余暇や趣味の時間などを含む「その他」も減少傾向となりました。「子どもの世話をする時間」が2時間以上増えていない人は、2時間以上増えた人に比べて、時間の使い方に大きく変化はありませんでした。 <子どもの世話が2時間以上増えた人で「6時間以上の勤務」が6割減、「仕事をしていない」人は2.4倍と激増>(図3-1)子どもの世話をする時間が2時間以上増えた人の、仕事時間の変化(n = 355人)仕事をする時間を、「6時間以上」「6時間未満」「0分(仕事をしていない)」の3つに分類し、コロナ感染拡大前と緊急事態宣言中で、それぞれの人数を調べました。コロナ感染拡大前に1日6時間以上仕事をしていた人は、206人から78人に減少しました。反対に、仕事時間が0分(仕事をしていない)の人は76人から182人へと、2.4倍増加しました。(図3-2)子どもの世話をする時間が2時間以上増えてない人の、仕事時間の変化(n = 1236人)「子どもの世話をする時間」が2時間以上増えていない人では、1日6時間以上仕事をしていた人がわずかに減少、仕事時間が0分(仕事をしていない)の人がわずかに増加しましたが、コロナ感染拡大前から緊急事態宣言期間中の変化は大きくありません。つまり、仕事を削って子育てをしている可能性があります。 3.メンタル不安<子どもの世話が2時間以上増えた人のうち「仕事をしていない」人の、約57%がメンタル不安あり>(図4-1)子どもの世話をする時間が2時間以上増えた人の、緊急事態宣言中の勤務時間別、メンタル不安の割合「子どもの世話をする時間」が2時間以上増えた人で、勤務時間別にメンタル不安の割合を調べました。子どもの世話の時間が増えていない人も含めて、全体では44.7%の人にメンタル不安があったのに対し、「仕事をしていない」人は12.4ポイント高い57.1%の人にメンタル不安のリスクがあることが分かりました。子育てに忙殺される中で、仕事や今後の生活の見通しが立たないことを不安に感じているのかもしれません。一方、緊急事態宣言中も「仕事を6時間以上」している人では、全体より6.2ポイント低い38.5%と、メンタル不安の割合が少ないことが分かりました。(図4-2)子どもの世話をする時間が2時間以上増えてない人の、緊急事態宣言中の勤務時間別、メンタル不安の割合「子どもの世話をする時間」が2時間以上増えていない人にでも、勤務時間別にメンタル不安の割合を調べました。仕事6時間以上の人、仕事6時間未満の人のメンタル不安は図5-1の結果と大きく変わっていませんが、仕事をしていない人のメンタル不安の数値は子供の世話が増えている人に比べて7.5ポイント低いことがわかりました。ただし、子育てが増えた人の結果と同様に仕事をしている人よりは不安の割合が大きいのが分かります。 4.野菜の摂取量の変化<子育て時間が増えた約3割の家庭で野菜の摂取量が減少。子どもに合わせたメニューが原因か?>(図5)野菜摂取量の増減緊急事態宣言中に「子どもの世話をする時間」が2時間以上増えた人の、2月と4月の野菜の摂取量を比較しました。野菜の摂取量について、14%の人が1/2SV(サービング、35g)程度減少し、13%の人が1SV(70g)以上減少していました。子どもの世話をする時間が増えた家庭の約3割で、野菜摂取量が減少していたことが分かります。「子どもの世話をする時間」が増えた人は、当然、子どもが家で食事をする回数が増えたかと思います。そのため、子どもの好きなものを作ることが多くなった、1品で済ませられる食事が増えた(※1)などの理由で、野菜の摂取量が減ったことが推測されます。「食事バランスガイド」では、野菜やきのこ、いも、海藻などの副菜を、1日に5~6SV分(350~420g)食べることを推奨しています。また、「健康日本21(第二次)」では、野菜の摂取量を350gとすることを目標としています。一方、日本人の野菜の摂取量は約280g(※2)で、およそ1SV(70g)分不足しています。このことから、「子どもの世話をする時間」が増えた家庭では、より野菜不足に対する注意が必要なことが伺えます。(※1)当社の分析で、炊き込みご飯や焼きそばが増えたことが分かりました。https://www.linkncom.co.jp/news/press/310/(※2)厚生労働省:「平成30年国民健康・栄養調査」の結果より。20歳以上の野菜の平均摂取量は281.4g。 専門家からの意見【京都大学 教授 近藤 尚己先生(医師・医学博士)】子育て時間が2時間以上と大幅に増えた人の中には、仕事ができない、あるいは仕事がないことへの不安を抱えている人が一定以上いることがわかったのは重要な発見だと思います。コロナ禍で保育時間を短縮せざるを得ない保育園等の話を聴きます。保育園であずけられないために、職を失ったり、仕事時間を減らすことでストレスを感じているのかもしれません。仕事が減った方の収入減少がどれくらいあったか、などについて、追加で検討してみることも大切だと思います。また、保育園の受け入れ状況も次第に変化していると考えられますので、継続的にこのような評価をして、状況把握していくことで、子育て支援の施策等を検討する材料になると思います。◆近藤 尚己先生 ・社会疫学者 ・公衆衛生学研究者・京都大学大学院医学研究科社会疫学分野 教授・日本老年学的評価研究機構理事・日本疫学会代議員・日本プライマリケア連合学会代議員 【女子栄養大学 教授 武見 ゆかり先生(管理栄養士・栄養学博士)】今回の解析から、子どもを世話する時間が増えた人では、野菜摂取量が増えた人より、減少した人の割合が高いことが示されました。全体(215人) の集計では、野菜摂取量が1/2SVまたは1SV以上増えた人は合せて22%、逆に1/2SVまたは1SV以上減った人は23%だったそうですから、子どもの世話に時間をとられるようになった方は、それ以外の人に比べ、ご自身の食事への配慮がしにくかった、できなかった忙しい生活の様子が推察されます。懸念されるのは、ご自身だけでなく、子どもの食事も同じで、野菜摂取不足が起きているのではないかという点です。スーパーマーケット等で野菜の惣菜を買ってきても良いでしょう。手間をかけずにまずは、朝・昼・夕食の1回だけでよいので、食卓に「プラス1皿」することを心がけていただきたいと思います。◆武見 ゆかり先生 ・女子栄養大学教授、女子栄養大学大学院研究科長・農林水産省 食育推進会議 委員・厚生労働省 厚生科学審議会 委員・日本健康教育学会 理事長・日本栄養改善学会 理事(学術担当) ※各コメントは発言者個人の意見であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。調査の概要調査・分析期間●アンケート 2020年4月30日(木)~2020年5月8日(金)●ライフログ(野菜の摂取量) 2020年2月1日(土)~2020年2月29日(土)、2020年4月1日(水)~2020年4月30日(木)分析項目●アンケート<1日の時間の使い方>平日、緊急事態宣言前と後で、下記の行動に24時間中何時間費やしたかを質問。(睡眠、通勤、職場で働いている時間、自宅で働いている時間、子どもの世話、家事、食事、運動、その他。)<メンタル不安>下記の選択肢のどれか1つ以上に当てはまった場合を「メンタル不安あり」として解析。・この1ヶ月間、気分が沈んだり、憂うつな気持ちになったりすることがよくある。・この1ヶ月間、どうも物事に対して興味がわかない、あるいは心から楽しめない感じがよくある。・孤独を感じている。分析対象者AI健康アドバイスアプリ「カロママ」のユーザーで、アンケートに回答し、分析・発表の許可を頂いた方6,302人(男性31%、女性69%)のうち、・「子どもの世話をする時間」が2時間以上増えた方、355名。・野菜の摂取量は、2月と4月に食事記録のある215名。■株式会社リンクアンドコミュニケーションの概要リンクアンドコミュニケーションは、「社会の健康課題を解決し、世界の誰もが自然に健康になる世界を創る」をミッションとし、ICT×専門家ネットワークで「専門家がもっと身近にいて健康をサポートするシステムの構築」を目指しているヘルステック企業です。全国で約1万人の管理栄養士・栄養士のネットワークをもとに、食と健康、栄養分野のリーディングカンパニーとして、健康アドバイス事業、健康情報の発信事業に取り組んでいます。所在地 : 〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町4-1 新紀尾井町ビル5階設立 : 2002年7月25日資本金 : 7億8720万円代表者 : 代表取締役社長 渡辺 敏成URL : https://www.linkncom.co.jp/ <提供サービス>・企業・健保・自治体・スポーツクラブ向け健康アドバイスアプリ「カロママ プラス」・一般向け健康アドバイスアプリ「カロママ」・健康医療ニュースを専門家が解説するレビューサイト「HEALTH NUDGE」・管理栄養士・栄養士向けのポータルサイト「かわるPro」